分析例(1)
製品の表面に付着した異物の特定と発生源の特定
①光学顕微鏡による観察⇒②FT-IR分析⇒③解析⇒④発生源特定 という手順で実施しました。
・発生源特定では、解析により得られたデータを、製造ラインで使用される材料と照らし合わせて、最終工程の自動選別機で使用される材料であることを特定しました。
・異物の発生源が特定されたことによって、クレームへの適切な対応が可能となり、製品の歩留率も向上しました。
<FT-IR分析>
・異物と、製造ラインで使用される材料のスペクトルを比較
<光学顕微鏡観察>
・光学顕微鏡により繊維状の異物等を確認
・FT-IR分析結果と併せて発生源を特定
分析例(2)
バケツ取手部の強度劣化の原因究明
水を入れたバケツを運ぼうとしたところ、取手部が外れ、バケツが落ちて破損。取手部をとめているネジの表面が白くボロボロになっていました。
①ネジ表面の白い部分と他の部分をサンプリング⇒②FT-IR分析という手順で実施しました。
・両者のスペクトルの比較から、強度が劣化している部分においては、酸化が非常に進行していることが判明しました。
・製品の品質向上のためには、取手部の劣化防止対策(酸化防止剤の種類の変更等)が必要であことがわかりました。
<壊れたバケツとネジ>
<FT-IR分析>
取手部のネジの①白濁部(左スペクトル上段)は、②青色部(同下段)に比べて吸収が大きくなっている箇所がある。この箇所の吸収は、①が②よりも酸化されていることを示しています。
バケツ取手部の強度劣化の原因は、ネジ部において酸化が進行したことによるものと考えられます。
分析例(3)
ピンポン球の材料分析
卓球で使用されるピンポン球は、以前はセルロイド素材でしたが、ITTF(国際卓球連盟)の決定により、2012年のロンドンオリンピック以降、非セルロイドのプラスチックに変更されました。そして、現在、プラスチックの材質に関しての規定はありません。
プラスチック球の製造国主は中国で、次いでドイツ、日本です。そこで、材質の実体を知るためにピンポン球の材料の確認を行いました。
①各社の玉(24種類)からサンプルを採取⇒②FT-IR分析という手順で実施しました。
同じ会社でも製品により使用されている材料が違なるものがありましたが、6種類の材料が単体で使用されていることがわかりました。
これだけ材料が違えば、弾み方やカーブのかかり方も違ってくるかもしれません。
<測定に用いたピンポン球の写真>
<材料別の代表スペクトル>
上記のA 社からI 社の玉を全て測定しました。
右図のスペクトルで示した6種類の材料のいずれかが、単体で使用されています。
(参考)
この測定は、FT-IR測定未経験の方が1時間で測定し、データベースを用いて
検索し行いました。
トレーナーがサポートしながらの作業でしたが、サンプル切断から結果の取りまとめまで約3時間で終えました。
分析例(4)
顕微IRの「ATRイメージング法」による髪の毛の断面分析
①髪の毛をカミソリで切断⇒②断面を顕微IRの「ATRイメージング法」で測定という手順で実施しました。
※ATRイメージング法での空間分解能は、約2μm□です。
ATRイメージングでの画像(右端の図の上、下)は、
スケールバーの上(赤色)の色になるほど、
解析したピークが大きいことを示しています。
例えば、右端の上図では、-CH2 ピークは、髪の毛断面中央で大きく、
中央付近および表面は小さく、
表面と中央の間ではさらに小さいことがわかります。
右端の下図は、タンパク質ピークに対するα-へリックスピーク比を
表示した図です。
1点の測定および空間分解能の低い測定では解析できない情報が、
イメージング手法を用いれば詳細まで解析することが
可能となります。
分析例(5)
顕微IRの「ATRイメージング法」によるレトルトご飯のパウチフィルム層の分析
①フィルムの切片をエポキシ包埋⇒②断面を切断⇒③断面を顕微IRの「ATRイメージング法」で測定という手順で実施しました。
1. 測定結果のスペクトルを抽出し、なるべく多くの層が
分離して表示されている波数の解析図を選びます。
2. 各層のスペクトルを抽出し、
それぞれのスペクトルを解析します。
3. スペクトル解析結果から、
フィルムは、少なくとも6層構成であることがわかりました。