「統計と装置分解能を使った
分散評価法の紹介」
参考:岡田きよみ・室賀 駿・大嶋正裕;高分子論文集、vol.75、No.2、212-220(2018)
「FT-IRイメージングを用いたポリマーコンポジット中の添加剤の分散評価法」
<どんな方法か?>
画像が得られる分析装置の最高分解能で試料を測定後、デジタルデータを取り出して数値解析を行い、その際に統計処理を用いる。
この方法は、CNFの分散だけでなく、どの顔料やどの材料にも応用できるだけでなく、いずれの画像が得られる分析装置にも適応できる。
赤外分光光度計(FT-IR)のイメージング測定を用いて、ポリプロピレン(PP)中のセルロースナノファイバー(CNF)分散を測定した例を説明する。
STEP1:最⾼空間分解能(約2μm)でイメージング測定
STEP2:測定データからピーク解析を⾏い、画像を得る
STEP3:画像を構成する個々の数値を位置情報とともに抽出
STEP4:数値データを統計処理
(STEP2と3は、使用するソフトよって先に数値データを位置情報とともに抽出した後にピーク解析してもよい。)
統計解析では、窓枠サイズを変化させることによって、それぞれの窓枠での標準偏差あるいは(濃度差のある場合は)変動係数を求め、窓枠サイズと標準偏差(SD)あるいは変動係数(CV値)の関係をグラフに表す。窓枠サイズを測定装置の空間分解能と考えると、それぞれの分解能でのCV値で濃度分散が指標化できる。
CV値は、窓枠サイズが⼤きくなるに従って⼀定値に近づくが、グラフのそれぞれの窓枠サイズでのCV値と全体の傾きから分散状態が比較可能となる。
上記の分散評価を用いた例を示す。
セルロース/PP=5/95 のコンポジットを、左表に示したように条件をかえて作製した。
それぞれの試料の断面をFT-IRイメージング法を用いて測定し、解析していられたグラフを左図に示す。
・セルロースは、針葉樹の方が分散がよい。
・セルロースは、変性した方がしないよりも分散がよい。
・実験室での強混練は、成形機を用いたものとほぼ同等の
分散性である。
ことがわかる。
<画像データを数値データで解析するその他のメリット>
分散性だけでなく、画像データを数値データとして取り出すメリットは他にも多々ある。
左にその一部を示す。
使用ソフトによっては、様々な計算ソフトが組み込まれており、自分で計算式を入れることなく使用できる解析も多い。
解析データを総合して解釈することで様々な事実が見えてくる。
解析ソフトを使用した例を左に示す。
上記の分散を解析した試料と同様の試料の例である。
数値データを二値化して、CNFの凝集形がどの方向を向いているか(Orientation)、どれだけ円に近いか(Eccentricity)を計算した値と計算した際の二値化図が左である。
スキン層では、Orentationがコア層よりも90度に近く、より樹脂のながれが一定方向(断面に平行)に強かったことを示唆している。
一方、Eccentricityは、大きな違いがない。断面垂直方向では、樹脂流れの強さがスキン層とコア層ではCNFを変形させるほどの違いがなかったことを示唆している。
この結果と樹脂流れのシュミレーションを対応させてみるのも面白い。